インク

とっても素朴な疑問がある。それは、プリンターのインクって高すぎないかってこと。
別に絵具と一緒だと考えているわけではないけれど、純正インクが一本1000円近くするってどうなの・・・?っていつも思う。6色セットだと5000円以上する。機械をそれなりの値段で買ったあと、インクが切れるたびにこれだけの出費をしないと使えないって、考えてみたらちょっと首をかしげてしまうのは私だけ?

我が家はブラザーのコピー機能付きのFax電話とエプソンのプリンター2台の計3台を所有している。白黒印刷の頻度が圧倒的に高いが、それでも黒はもちろんのこと、シアンだけ、マゼンタだけ・・・というようにカラー色が切れていく。切れた色を順次補充していくと割高になり、セットで買って切れた色をその都度補充していくと、よく使う白を2本入れていたりする水彩絵の具のような配慮はないので、全色装填しきるまでに黒を何度か買う羽目にもなる。何というか、色んな意味でインクにはモヤモヤとした不満があるのよね。

それでも我が家にプリンターは欠かせない。まさに”使い倒す”勢いで使う。数えてみたことはなかったが、10年間で今のプリンターはたぶん7台目だ。全て使い倒し、修理するなら買った方がお得・・・となって買い替えて来た。そして新しく買う度に勉強する。これは起動するまでが時間がかかる、これはコピーしている時間がかかる、これは読み取り時間が異常に遅い、これは読み取ってからコピーが始まるまでに時間がかかる、これはコピーしている時間が長い、これは読み取ってしまったら蓋を開けて次の用紙をセットしても大丈夫、これは印刷が終わるときまで蓋は開けられない、これはコピーの音がうるさい・・・などなど。もちろん買うときには、かかる時間表示を読んで、説明も受けて、その中から選んでいるのだが、買って使ってみて初めて分かることも多いのだ。そして「あー、これって考えもしなかったけど、結構ストレスだなぁ・・・」となる。

こんなふうに今ではプリンターに期待することが多くわがままになり、より早く写し取れる機械をと選んでいるが、私が中学生くらいまではガリ版印刷かタイプライターだった。友達のノートを借りるなら手で写したし、地図を写すならトレーシングペーパーを買った。文集を作るとなれば二枚重ねの紙が配られ、鉄筆で削るように書いて提出すると、先生がローラー印刷し本にした。
私は「文集」となるとよく先生に頼まれて、放課後に印刷室で手伝いをした。鉄筆で書かれたシートをローラーに貼り付け、トレーにのりの様なインクを出してシートにまんべんなくインクが付くようにすると、ローラーを回して藁半紙に人数分印刷し、また別の子の作文シートをローラーに貼り付けて同じように回した。面白い手伝いではあったけれど、夕方薄暗くなるまでインクのにおいに包まれながら狭い印刷室で一人ローラーを回していると、「先生はいつもこうやって毎日プリントを作ってくれているんだなあ」とふと思った。それまで生徒が下校した後の放課後の先生の行動など考えたこともなかったが、放課後自分たちのために黙って一人で作業する先生と、いつも大きな声で元気に教室にいる先生が別人のように思えて、インクの匂いのように何か表現しがたい、もの悲しさのようなものを子どもながらに感じた。今、大人になってその気持ちが何だったのかと分析してみると、親よりも絶対的な大人に思えた先生も、食べていくために働く大人だということを感じ取ったのだろうと思う。
先生は暗くなってくると薄暗い部屋に部屋の電気をつけ、「助かったよ、ありがとな」と声をかけて早く帰宅するようにと言ったが、残りの分量をみれば、その後もまだ作業が夜遅くまで続くだろうこともわかって、これからはどんなプリントももっと大事にしようと思った。

中国の活版印刷の発明から始まった印刷は、思い出のガリ版を経て、スティーブ・ジョブズのおかげできれいな印刷技術のパソコンやプリンターの普及と時代が進み、今ではあっという間に家でも美しい印刷物ができ上がって便利になった。ガリ版を知る者として、本当に毎日苦労なくプリンターを使って感謝もしているが、しかしそれでもインクはせめて今の半額くらいにしてほしい思う。確かに、メーカーによってインクの耐久性も違うことも、噴出するインクの量とか粒子の大きさが違うからメーカーのインクを使わないと目詰まりするという理屈も分かっているつもりだ。でも、どうしてそこまで高額なのかよくわからないし、純正でないと本体が壊れてもしまうかもしれないと言いながら互換インクをなぜ売るのかもわからない。
理由がちゃんとあるのかもしれないが、私はメカには弱い全くの素人だから、インクの粒子の大きさだけは各社そろえられないのだろうかと単純に疑問を持つ。もちろん企業努力で発色のいい、持ちのいいインクを作るのは大切だが、「他社のインクを使って壊れても補償しませんよ」などという脅しで自社インクを買わせるのではなく、インクの質の良さを売りし、消費者は印刷するものの目的に合わせてインクを選べるようにするのが潔いと思うし、消費者としては理想なんだけどな。

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