私が最近ネットスーパーにはまったわけ

家にいながら野菜や玉子、肉魚などの食料品やトイレットペーパーといった日用品がネットで購入出来て、希望の時間に配達してもらえるネットスーパー。このシステムが登場して15年ほど経つと聞いてちょっとびっくりした。ここ5、6年ぐらいのことだと私は勝手に思っていたから。

私はひどい肩こりと腰痛持ちで、買い物は昔から苦手である。新婚当時は土日などに夫と散歩がてらでかけ、ふらりと新しいお店に入ってお茶したり、本屋で立ち読みしたりして、帰りに買い物をして荷物をふたりで持って帰る・・というデートのような買い物を楽しむことができた。しかし今、私たちが夫婦二人で外出するとしたら買い物の為、または外食というオマケ付きの買い物の為でしかない。

「買い物行く?」と夫。
「そうね、行こうかな・・・」と私。
「一緒に行かなくていい?」と夫。
「いいよ、1人で行けるし」と私。
「荷物持ちがいると思って」
「まあ、そうね・・・」
「じゃあ一緒に行くよ」

こうして二人で買い物へ行くのだ。ふらりとどこかの店へ入ることなど万に一つもないし、連れ立って歩くのは”財布を持つ人”と”買い物かごを持つ人”である。”行きたくて行くわけじゃないんだけどね・・・的夫”と”頼んだわけじゃないもん、的妻”の買い物だ。年を取ると、若い頃の”恋の駆け引き”に似た、しかし妙ちくりんな力くらべが生まれるようだ。
こんな味も素っ気もない買い物だが、いつかこれも新婚当時の買い物と同様に懐かしく思い出すこともあるだろうな・・・と時々夫の背を見て思う。年老いて買い物なんてできなくなった時に。一人になった時に。それほど遠くはない将来だろう。

その時のための予行練習ではないが、去年あたりから私は積極的に西友のネットスーパーを利用するようになった。我が家は有り難いことに買い物に不便な地域ではない。近くに西友もマルエツもある。もっと大型の店もある。しかし重いものを夫に持ってもらう買い物をしなくて済むのなら、と始めた。いつも買い物をする店なら商品の勝手もわかって安心であるし、5000円以上なら配達料が無料ということも我が家の買い物金額には妥当だったからである。

それでも最初は不安だった。例えば野菜を頼んで、自分なら買い物かごに入れないような代物が来たらどうしよう・・・。自分の目で見て選ばないと心配で、お肉やお魚の買い物を夫に頼むことも、余程でない限りしない私である。生協にも加入しているが、お米や油、調味料、冷凍食品などいつも買うものは限られていて、野菜は玉ねぎや人参、じゃがいもしか買わないし、お肉やお魚はまず買わない。
15年加入している生協でさえ信じきれずにいる私が、ネットスーパーをどれだけ信じ、便利に活用できるというのだろうと思ったが、興味もあって始めた。

最初は生協のようにマヨネーズとかお味噌といった調味料、豆腐や納豆とかパン、缶詰、冷凍食品など梱包されている状態の商品から試した。
次に玉ねぎ、人参、じゃがいも、大根やゴボウといった比較的個体差の大きくなさそうな野菜に手を出してみた。
それから葉物野菜、次にお肉、そして最後は最難関、お魚もチャレンジしてみた。
実は近くの西友はあまり大きくない店舗で、魚部門は特に弱い。たまにマグロのお刺身を柵で買うぐらいで、魚は別の大きな魚専門店で対面で買うのが通常だ。だから西友のネットスーパーで魚を買うことは全く想定していなかったが、時々買うマグロのサクを試してみたのだ。

段階を追って試していった結果、ネットスーパでは野菜でも魚でも、自分で見繕うよりいいものが届くことがわかってきた。
例えば、刺身なら形も部位も比較的いいものが届く。普通私たちはお店で魚を買う時、その時間に店頭に並んでいたものの中から選ぶしかないが、ネットの食材は店の裏にあるものの中から選ぶのだから、そもそも分母が違うのかもしれない。

アボカドを例にとってみても、すくなくとも私よりはるかに見る目のある人が選んでいるということがわかる。アボカドは硬くても柔らかすぎてもいけない。私はアボカドを選ぶのが下手で、ちょうどよさそうだと思ったのに切ってみたら傷んでいた・・・なんてこともしょっちゅう。そんな失敗を繰り返すうちに「冷凍アボカドを買うのが一番確実」と生を買うことを半ばあきらめていたのだ。
しかし、ネットスーパーで買ったアボカドは、今晩の料理にも使えるぐらいの熟し方であるし、切っても中が茶色い点々があったとか、切り落とさなければならないほど傷みの部分があったということが、今までのところ一度もない。包丁で切っているうちに表面がぐちゃぐちゃになるような熟度でもなければ、野菜を切っているような刃あたりでもない。まるで刺身を切っているように柔らかすぎず硬くないベストタイミングな状態のものが届くのだ。
コブサラダが大好きな我が家は毎回アボカドを注文し、毎回アボカドの「当たり」に驚いて、ネットスーパーへの信頼を得ていった。私の見極める力があまりに低いということが今までの失敗の要因だとしても、私に代わって誰かが見極めてくれたこのアボカドの当たりが、一番信頼しにくいお魚の購入にまで結びついたと言っても過言ではない。

しかし、お店側としてもこの点こそ一番気を配っている部分だろう。だって、もしネットで頼んだ野菜が傷んでいたり、形が悪かったり、色がいまいちだったら、私たちはどんな反応をする?
めったにないことではあるけれど、運悪くもし自分で買ってきた野菜の中が傷んでいたとき、私は「運が悪かった」「今度はもっと注意して買おう」と考えるようにして、お店にクレームを言うことはない。肉や魚の傷みは論外だが、土で育った野菜はある程度仕方がない・・・と普通に考えられるからだ。それに証拠のものを見せにわざわざ店へ持って行くことも馬鹿げてるし、1日経てば既に過去の話である。言って返金してもらわなければならないような金額でもないし・・・という面倒くさがりな自分の性格にもよるが、これがもしお店側が選んだもので傷みがあったとなったら、私の心情もちょっと違ってくる。いつもは運のせいや自分の不注意のせいにしていている私も、「運べばいいんだろうとばかりに適当に選んで持って来たんじゃないの?」というお店の対応へ勘ぐりがどうしても心に生まれてしまうに違いない。シビアなお客なら当然クレームをして返金も求めてくるだろうし、何よりお店の姿勢に対する信頼はガタ落ちだ。これは、客がお店に事実を伝えようが伝えまいが関係なく、だろう。
私は勝手のわかっている西友でしかネット注文したことがないが、どのお店においてもこうした点については同様に細心の注意を払っているだろう。お客の目で見て合格となる品物より良い状態のものを届けなければ、わがままな私たちお客は物には満足できても、心理的な面ではきっと十分な満足は得られないに違いないからだ。

実際に確かな目を持った専門家が見極めてくれているのか、詳しいことは分からないが、決して適当に選んで持ってきているのではないと今までの経験から私は今のところ信じている。その信頼は、商品の配達の仕方からも生まれた。瓶物は必ずネット状のクッション材をきちんと巻き、普通なら有料のビニール袋に全てきちんと小分けし、常温のものは常温で、冷凍ものは冷凍状態で、冷蔵ものは冷蔵でとコンテナを分け、それらのコンテナをさらに一軒につき一つの大きな保冷コンテナにまとめて各家庭の玄関先まで運んでくるのだ。自分が買って家まで運ぶよりよっぽど冷たいまま、よっぽど丁寧で、気持ちがいい。

信頼されなければスーパーも商売にはならないし、信頼しなければ私もこの便利なサービスを受けることはできない。
買いに行けないほど遠いわけではないし、小さな子がいるわけでもなく、買い物金額も送料無料のラインを少し超える程度で運んでいただくのは申し訳ないなあ・・・と引け目さえ感じつつ毎回玄関で買い物袋を受け取るが、それでもやっぱりやめられない。信頼の持ちつ持たれつ、最近の私の「はまりもの」である。

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