蒸籠でヘルシー料理

去年の秋、念願だった中華蒸籠を購入した。横浜中華街などで、もうもうと湯気をたてて肉まんを蒸しているあの大きな蒸籠や、小籠包などが入っている蓋つきの小さな蒸籠がずっと昔から欲しかった。

それまで家で中華まんを食べるときは電子レンジで温めていた。プラスチックで作られた小さなドーム状の蒸し器に、肉まんを一つずつ入れて蒸すのだ。
このプラスチックの蒸し器は、お値段の割にとても良くできている。水で濡らした肉まんをドーム状の入れ物に入れて、ほんの少しの水を追加してレンジにかけるのだが、すのこがついているので肉まんの底面がべしゃっとしない。また、蒸気が抜けるようにも、抜けないようにも蓋の締め方で選べるような工夫があって、これを使って温めるとふかふかの肉まんができた。

しゅうまいなどでもその効果は抜群で、冷凍しゅうまいであっても、お皿にしゅうまいを並べてラップをしてレンジにかけたのとは大違いの仕上がりになる。
長い間この蒸し器で対応し、それなりに満足はしていたけれど、こればっかりはプラスチックの限界、雰囲気はやはりなかった。
そして、あるとても寒い夜、ネットショッピングでかごやさんのページにたどり着き、たまたまそこでシャウ・ウェイさんの肉まんの料理教室の様子を見て、どうしても蒸籠がほしくなってしまった。中華街のようにもわあ~っと、目の前が真っ白くなるほど強い蒸気で出来上がる中華まんを我が家で出すことができたら、家族はどんなに喜んでくれるだろう。
そう思ったらもう我慢が出来なくなった。長年の夢であった蒸籠である。もう十分に我慢した。もう買ってもいい頃だろう・・・。そう思って購入したのである。

私が蒸籠を買わずに我慢してきたのは、ひとえに収納の問題からだった。小さい蒸籠にせよ、大きい蒸籠にせよ、我が家のように狭い台所では収納があまりにも少なく、蒸籠を納める場所などなかったからである。
我が家の台所で一番面積を取っているのは土鍋である。大きな土鍋がひとつ、1人前用の土鍋が4つある。これが収納スペースの大きなパーセンテージを締めているのは重々承知しているものの、一人前用の土鍋は我が家の鍋焼きうどんや、味噌煮込みうどんに決して欠かすことのできないものであるし、大きな土鍋も冬に必要なものである。にもかかわらず今回、蒸籠を買うというからには、相当の量のものを処分しなければならない。
そこで私は、結婚祝いでいただいたけれど、今までほとんど使うことがなかった食器セットを処分することにした。赤と金の縁取りがされた食器だったため、中華のフルコースを我が家で作るとか、クリスマスの食卓に使うとかには適していたが、それ以外は全く使っていなかったものなのだ。
これを処分したことで、様々な食器の移動が可能になり、蒸籠のスペースが生まれてきたのである。

痛みを伴って得た蒸籠は、直径24センチの竹蒸籠が二段と蓋、蒸籠の直径に合ったステンレスの両手鍋である。おまけとして、蒸籠に敷く穴あきのクッキングシート10枚もついてきた。この青々とした竹蒸籠がやって来てから、我が家のヘルシー蒸し料理生活が始まる。

まずは何をさておき、肉まんである。買って来た肉まんを湯気のたった蒸籠に入れて蒸してみた。
思わず歓声が上がる。肉まんが大きくなっている! 1.3倍 くらいは膨らんだのではないだろうか。肉まんと肉まんの間の隙間がなくなっているのだ。ムッチムチに膨らんだ肉まんの表面を指でさわるとほわっほわである。指で押しても跡など残らない。ぽよよんとした肉まんをトングでそっとつまみ、皿にのせると、まるでブランマンジェのようにぷるるんと揺れた。もう面白くってたまらない景色である。
食べればほっぺが落ちそう!!もう柔らかくって、甘くって、ふわっふわで、小さな子どもなら美味しさのあまりピョンピョン跳ねてしまいそうだ。
電子レンジにはもう戻れない・・・これが最初の感想である。この蒸籠で横浜中華街の「江戸清」の豚まんをふかしたらどんなに美味しいだろう。家族がはふはふ、ほふほふ、ふごふご言いながら巨大な豚まんにかぶりつく様子が目に浮かぶ・・。

蒸籠で次に試したのは野菜を蒸すことである。
1/8にカットしたキャベツ、皮つきのまま分厚く切った輪切りの人参とレンコン、一個丸ごとのジャガイモ、南瓜のスライス、きのこ類などを入れて蒸した。その下の段には塩麹で漬けた鶏肉だ。たれはゴマだれと、アンチョビーを混ぜ込んだマヨネーズソース、一味やポン酢、塩山椒といったものである。
食卓でカセットコンロを使って蒸し、みんなが着席してから蓋を取るとお決まりのように歓声があがった。
野菜は甘くなり、何もつけなくても十分に美味しい。ふうふういいながら、蒸籠の中から取り皿にアツアツの野菜を取る。体の中から温まるだけでなく、乾燥気味の冬の部屋は温かい蒸気で潤って体の外からも温まるし、何より寒い夜に温かいものを家族で食べれば心も温まる。

しゅうまいも作ってみた。私は餃子と春巻きは手作りするが、作った経験がないしゅうまいはいつも買ってきていた。しかし、蒸籠がやって来たのだ。レシピを探して作ってみることにした。
味はともかく、ふわふわのしゅうまいができて本当に美味しかった。味はこれから改良していかなければならないが、きっとこれが電子レンジで作っていたら硬くなっていただろうと思う。

蒸籠は冬だけのもの、というイメージがあったが、そうでもなさそうだ。端午の節句ではこの蒸籠のおかげでちまきを作ることができた。夏は冷たい茶わん蒸しやプリンもいいし、アツアツのしゅうまいにビールも最高だろう。トウモロコシだって枝豆だって、ゆでるのではなく蒸したら、ますます甘くなっておいしいはずだ。
暑い夏も、また蒸籠の蒸し料理が楽しめそうである。

買ってよかった・・・と心から思っている。処分した食器セットへの心の痛みも忘れ去った。
やはり、日々使うものこそこだわりたい、と改めて思う。申し訳ないとか、様々な思いから捨てられずにいる物も、老い先それほど長くはないわが身なら、処分していいだろう。一番自分の必要と思うもの、欲しいと思うものだけを身の回りに置き、大切に使って生活していこうと思わせてくれた道具である。

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