数日前、洗濯機の洗濯槽洗浄をした。洗濯が終わった後、うっかり干すのを忘れてしまって数時間後に慌てて干す、なんて失敗をしたとき、最近なんだか洗濯物が絵具箱の中に似た臭いがするようになってきたからである。この臭いのもとはカビのはずだ。
以前は毎月1日は洗濯槽の掃除の日と決めて続けていたこともあった。しかし、そんなに頻繁に掃除はしていないという周りの人たちの話を聞いたり、掃除のためには大量の水を使うことや、決して安くはない洗剤を使うことにだんだんと抵抗を感じ始め、しばらく洗濯槽のお掃除を怠っていたのである。
洗濯槽の掃除はちょっと手間がかかる。
まず、洗濯パンの排水溝にさしている排水ホースの口を外して上にあげ、40℃ほどに設定したお湯を洗濯機の高水位までためる。そしてさらに、上向きにした排水ホースからあふれる寸前までバケツでお湯を運び入れて、もうこれ以上は入らないという最高水位まで洗濯機にためる。それから洗濯槽洗剤を投入して洗濯機を回し、洗剤を溶かしたら、電源を切って数時間放置するのだ。
私がかれこれ10年以上使っている洗剤は「uruoi 洗濯槽用クリーナー」である。現在は内容はそのまま、「すっきり 洗濯槽クリーナー」と名前だけ変わっている。この洗剤は非石油系成分の洗剤づくりを貫いているエスケー石鹸による商品で、世の中では塩素系の物が主流の中、塩素系も合成界面活性剤も使っていない、酸素系の漂白剤の強力な発砲力と炭酸ナトリウムと石鹸成分でまる脂肪酸ナトリウムだけで汚れを落とす。カビはもちろん、石鹸カスなどの汚れも根こそぎだ。
洗剤や洗濯機の汚れ具合にもよるのだろうが、私がいつも使うこの洗剤はすぐに黒や茶色のぺろんとした皮のようなものが浮いてくる。うわあっ、こんなものが洗濯機の裏側にへばりついていたんだ・・・とショックになるような汚れだ。毎月行っていた時とは違って、やはり今回は少々汚れが多かった。
この浮き出た汚れ、私はついしげしげと見てしまう。鼻の頭の脂汚れを取るシールが売られているが、よく聞こえてくる話では、このシールにくっついた脂肪の塊の角栓をじいっと見いってしまう・・・というのがある。みんな同じだね、私もだ。洗濯槽の汚れをじいっと見るのはそれと同じ心境である。時間を追うごとにますます汚れが増えて浮いてくるのを見ると満足感でいっぱいになる。変な習性だろうか?いや、鼻の脂汚れ取りにしても、洗濯槽洗剤にしても、やったことのある人は「あるある」のはず。
今回、このタイミングで洗濯槽洗浄をしようと思ったのは、臭いがつくようになったからだけではない。たとえ臭いがつかなくても時期的にしていたことである。それは衣替えだからである。
6月から学生は制服の衣替えだ。息子はもう衣替えの必要がないのだが、親がこの衣替えをうっかり忘れると子どもは大恥をかくことになる。
一度だけ、子どもが小学生の時、衣替えを忘れて冬の制服で登校させてしまったことがあった。冬の制服と言っても、もう暑い時期だったので上着は着ていなかったから、着るものとしてはズボンの生地が冬の生地であっただけだったが、帽子は夏の白い帽子ではなく、冬の帽子で出かけたので「衣替えを忘れた」ということは隠せなかったようだ。
もともとかなり用心深い性格の私だが、一度そんなミスをするとさらに用心深くなって、それ以降は制服のハンガーに張り紙をするようになった。おかげで失敗は一度で済んだが、一度もしないのが「できるお母さん」だよね。反省している・・・。
制服の衣替えの心配はしなくて済むようになったが、クリーニングには出すほどでもない衣類や布団、カーテンなどは自宅で洗濯だ。洗える敷布などは韓国式に風呂場で足で踏んで洗い、毛布や冬のシーツといったものは洗濯機で洗う。良く晴れて乾燥した空気でしょう、とお天気お姉さんが言った日が一番のねらい目だ。
その日は朝から洗濯機が何度も回り、お風呂場ではスカートをまくり上げてパンツに差し込んだり、ズボンならもういっそのこと・・・とパンツ姿になって「いっちに、いっちに」である。この、あまりにとんでもない格好は、家族の誰も見たことはない。スカートが詰まってこんもりとオムツのように膨らんだパンツをはいた鶴の、健気な家内労働である。
こうした衣類の洗濯にしても、風呂場での洗濯を脱水するにしても、きれいな洗濯機でして、お日様によーくあててカラカラに乾かしてからしまわなければエライことになる。以前洗える枕を洗い、よーくよーく乾かしたつもりでいたが、奥までは乾き切れていなかったのだろう。圧縮袋にしまった枕を翌年取り出して、卒倒しそうになった。しっかり圧縮された袋の中でカビが生えていたのである・・・。わずかに残っていた空気でカビが生えたのだ。あるいは洗濯機の汚れのカビが繁殖したのかもしれない。とにかく、圧縮袋にしまうならきれいな洗濯機で洗い、これでもかっ!というくらい乾燥させてからでないとダメだということを学習した。布団などでこういう失敗はしたことは一度もなかったが、枕は嵩がある分、要注意である。
洗濯槽の洗浄が終わってからは、洗濯は臭いもなくなって、今のところ快調だ。
明日の東京は天気も良く、乾燥した空気だとのこと。今年は梅雨入りが予定より一週間ほど遅れる模様だというので、少し出遅れた衣替えもこの期間に全て完了できそうだ。これから数日は、洗濯物を干すベランダのスペースと天気予報とのにらめっこである。何から洗うか、気温とスペースとの兼ね合いを考えて、洗濯の順番を決めなくてはならない。夏用の物が入っている布団も天日干ししなくてはならない。その夏用の布団が入っていた圧縮袋の使いまわしのシフトも決めなくてはならない。
衣替えは結構頭を使う。