赤シソ酢とゆかり  梅雨の楽しみ(2)

私の梅雨のふたつめの楽しみに、赤シソ酢作りとゆかり作りがある。
梅干しづくりはしたい気持ちはあるけれど、我が家は梅シロップを作るので、梅干しは市販のものにお任せである。それに梅干しづくりはやはりハードルが私には高いようだ。何度かチャレンジして、「餅は餅屋に任せろ」という結論に至った。
以前は、梅干しつくりの時に一緒に漬けた赤シソでゆかりを作ったが、今はもう梅干しをつくらないので、代わりにシソ酢を作るときに使った赤シソでゆかりを作る。味気ないかしら・・・と心配したが、そんなことはない。赤シソの香りと赤シソ酢の酸味で、立派なゆかりができる。

去年は京都大原から5キロ購入した。スーパーで見かける赤シソは縮れが少なくぺらっとした葉だったり、シナシナしていたり、下の方や小さな芽はしおれて枯れているものも見かけるが、取り寄せた赤シソは横長の大きな段ボールのなかで新聞紙に包まれ、箱を開けると盛り上がるほどイキイキしていた。根付の枝についている葉は大きくて、しわが深く、ピンとして、じくじく傷んだものや古い葉は全くない。この元気いっぱいの赤シソの葉を手で摘み、あく抜きをしっかりして酢に浸し、赤シソ酢を作るのだ。

こうして出来上がった赤シソ酢は長期保存するために煮沸消毒するが、酢飯の合わせ酢として米酢と半々で使えば、桜の花びらのようにはんなりとしたすし飯になるし、自家製ドレッシングにも使える。また、冷たい炭酸水で割れば赤シソジュースになっていつでも楽しめる。これは梅シロップとは違って甘くないし、赤シソの美しい赤紫の色とさわやかな香りで、酸味のあるとても美味しいドリンクだ。
夫も子どもも甘党だからか梅シロップオンリーだが、私は毎朝起きて台所へ行くと、まず最初にこの赤シソジュースをさっと作って飲む。お目めパッチリ、お口さっぱりになって、体も頭もしゃっきり目覚める。

色の元になった赤シソはと言えば、竹の大きな盆ざるに広げてカラカラになるまで天日干しをし、どうせならと赤シソの色に合わせてピンク色のヒマラヤ岩塩を使って一緒にミキサーで挽けばゆかりになる。
たくさんできた赤シソの酢漬けはしば漬けにも使ってみたが、市販の物のような濃い色にはならなかった。売られているものは着色料も使われているのかもしれない。仕方なく、あまりおいしそうな色合いにできなかったしば漬けは諦めて、ほとんど全てゆかりにしてしまった。
毎日のお弁当に、あるいはおにぎりにと使うが、自分で塩分を調整してるので、たくさんかけても気にならず、香り豊かなご飯に飽きることがない。

でも、うっとうしいと思いがちな梅雨の季節に、ちょっとした季節の節目の仕事があるのって、なんか幸せだ。昔の人は、鰹節を削ってだしをとり、畑から取ってきたみずみずしい野菜を刻んで、自分で仕込んだ味噌で味噌汁を作ったのだろう。ふいごで吹いて火を整えてご飯を炊き、自分で漬けた梅干しや沢庵を出し、朝やって来た納豆売りから納豆を買って食事を整えたのだろう。ひとつひとつ手間をかけて整えられた食卓は、今の食卓よりずっと豊かなものだったに違いない。
私はいりこだしを使うが、いりこからではないし、味噌も買ってくる。梅干しも沢庵も買ってくる。昔の人の生活は決して私にはまねができないし、難しい料理も私には不可能だ。しかし、昔の生活には強い憧れがある。だから、こんなふうに、一年に一回だけ、季節のものをちょっと手作りしてストックするのが好きなんだと思う。ただの酢、ただのふりかけなのだが、自家製というだけで「純日本人」になれたような気持ちになるのだ。襟を正せたような気持ちにもなるのだ。

その一年に一回、私の「純日本人」の血が騒ぐ季節がやってくる。襟を正すつもりで、まずは冷蔵庫の中身を片付け、消毒しよう。そして梅しごと、赤シソしごとを迎えよう。自己満足でしかないが、心豊かな気持ちになれる楽しみな季節である。

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