日本の食卓に欠かせない海苔。味付け海苔も美味しいが、焼き海苔の持つ磯の香りや歯ごたえは格別だ。
韓国の塩とごま油のついた海苔も美味しい。焼き肉の時にサラダについて出てくるのも最高だ。まあ、手はごま油と塩でべとべとになるのは残念だし、指についた塩をついねぶってしまう自分の姿は、0情けなくも悲しくも映るだろうけど・・・。
我が家は一か月に約5帖(50枚)ほどの乾海苔を食べる。多いのか普通なのかわからないが、手巻きずしやおにぎり等でこのくらいの量を消費するので、2か月置きに海苔問屋さんでいつも10帖(100枚)購入する。問屋さんの説明では空気を抜いて冷凍するのが一番海苔の風味を損ねない保存方法だとのこと。解凍したら湿ってしまうのではないかと心配していたが、乾いた海苔を完全に真空にして冷凍庫にしまうと、使う時に封を切っても布団圧縮袋の封を開けた時のようにふわっと嵩が膨らむだけで、乾いた海苔のままである。開けてすぐ使うことができるし、風味はそのままだ。
私には海苔にこだわりがふたつある。
1つは「焼き海苔」ではないということだ。普通スーパーで売っている海苔もネットで買う海苔もみな焼き海苔だが、私はその焼く工程の前の状態の海苔を買う。黒々として磯の香りが強く、噛むと少しグニグニとした感じだ。遠火で軽くあぶると緑色に変わって「あー海草だなあ」と思う。生わかめを湯がくと緑色に変わるのと同じだ。しかし、私はあえてあぶらない。その黒いままの乾海苔を使う。お寿司屋さんのイクラとかウニとかの軍艦巻が、黒々としてパリッとした海苔だと数十倍美味しくなるのと同じだ。その海苔で手巻きずしをすると、もういくらでも食べられちゃうから困るんだなあ。
2つ目のこだわりは「無酸処理の海苔」であることだ。
海苔は本来、潮の満ち引きで海面に出たり、海面の下にもぐっていたりして成長する。海面の下にもぐっている時に成長し、海面の上に出てお日様の光を浴びて病原菌がついていたら消毒して・・・を繰り返して元気な美味しい海苔に成長するのだが、そうしていると海苔の成長が遅くなるので、常に海苔が海に浸っているようにし、消毒は薬で行うというのが「酸処理」だ。地域によって誤差はでるものの、だいたいは年明け早々に新海苔の収穫だが、何度も何度も海苔を収穫し単価を下げようとすると、この「酸処理」が必要になってくる。これを行わないのが「無酸処理」というわけだ。
私の母方の親戚が海苔の養殖業を行っていたが、この地域は「無酸処理」であった。分厚くて黒光りする海苔は、食べごたえのある海苔だった。小さいころからこの海苔しか食べたことがないまま大きくなり、大人になってからスーパーで薄い緑の海苔を見て驚いた。どんなにお値段のいいものを買っても、昔食べていた黒い海苔ではない。やっぱり親戚に頼まないと黒い海苔は食べられないんだと残念に思っていた。親戚だって代替わりして、簡単に頼めなくなっていたから・・・。
が、この黒い海苔を問屋さんなら売ってくれることを最近になって知った。「焼いていない海苔で」とお願いすれば、同じ値段で黒い乾海苔が手に入るのだ。もう感激である。あー何年ぶりだろう。
家族もそのうち、この海苔を切らしてスーパーで焼き海苔を買ってくると、「あれ?いつもの海苔はないの?」となってきた。いつも食べているのと違う海苔を食べて初めて「海苔ってものによって味が全然違う」ということがわかるようだ。いいことかどうかはわからない。「何でも好き嫌いなく美味しく食べられる丈夫な体」だけが財産みたいに育ててきたのだから。
しかし、本当にいい時代になった。問屋さんなんて普通はたぶん市場へ行かなければないでしょう?それがネットでピュッと注文できて、直ぐに食べられるんだから有り難い話だ。
ネット注文に長けた人はきっといろんな情報を持っている。あちこちブログをのぞいて「美味しいもの」「安全なもの」の勉強をして、美味しい食卓にしたい。