うどん 対 そば

自分の家の食卓は他の家の食卓と比べてどんな違いがあるのか、私はちょっと気になる。「突撃、隣りの晩御飯」の番組を見て、「あー、うちとあまり変わらないなあ」と思ったり「和食に中華に洋食に・・・?」と様々なジャンルの混在したメニューに驚いたり、「へー、こんなにたくさん料理が並ぶの?!」と落ち込んだりしながらも、同じ釜の飯を食うということが家族のきずなを強めるんだなぁ・・・としみじみ家族のあったかさを感じたりする。

我が家の食卓は特別なものは並ばない。和食、中華、洋食、麺、パスタやピザなど、手が込んだ変わった料理などは何もない。全て手作りするというくらいのことだ。でも、もしこだわりがあるとしたら「うどん」だろうか。
我が家はみんなでつつく大きな土鍋とは別に、一人前用の土鍋が4つある。主に鍋焼きうどん用だ。丼もあるが、それはご飯ものの時と蕎麦の時だけで、天ぷらうどん、キツネうどん、味噌煮込みうどんなど、うどんの時は土鍋である。あつあつをふうふう言いながら土鍋からうどんをすすると、丼から食べた時より美味しくなるし、お腹はいっぱいになるし、体はぽかぽかになる。特に冬の寒い日に家族でふうふう言ってうどんを食べるのは本当に幸せだ。

私の故郷は西なので、うどん文化である。子どもの頃は日曜日に家族でうどんを打っていたこともある。巨大なタッパーウエアのボウルに粉を入れて、こねて生地を作り、たしか生地をビニールに入れて足で踏んだ気がする。その生地を伸ばして細く切ると、切った麺をダイニングの椅子の背にぷらぷら下げて軽く干した。
手作りのうどんはコシが強く、子どもにはちょっと顎が疲れたが最高に美味しかった。うどんは小麦の甘さがあって香りもするし、つゆはだしがとても効いていて、香りも抜群にいい。しょうゆが少な目で器の底まで見えるほど透き通ったきれいなつゆに、しなやかでモチモチしたコシの強い、少し黄色みがかったようなうどんが入り、ホウレン草のお浸しや、ネギや甘いお揚げが入る。具になるおかずが何もない時は梅干しとたっぷりのおぼろ昆布がのる。それもすごく美味しかった。そういえば実家はおぼろ昆布をよく使ったなあ。

夫は東の人間だ。長野に住んだこともあるので蕎麦にはうるさい。いや、本当に蕎麦にうるさいのではなく、蕎麦の美味しさがわかるという意味だ。
結婚以来、ここの蕎麦が美味しいと言われて入った信州松本の蕎麦屋、東京の蕎麦屋、何件か連れて行ってくれたが、不味くない・・・というだけで私は美味しいと思ったことがない。
その蕎麦屋に問題があるのか、私に問題があるのかなのだが、私は蕎麦を自分で作っても、美味しいと評判の蕎麦をゆでて食べても全く美味しいと思えないのだから私が問題なのだろう。正直、カップ蕎麦と何が違うかわからないくらい、蕎麦の味がわからない。のど越しがいいとか、香りがいいとか言われても、ちんぷんかんぷんである。そば湯なんて不味くてたまらない。

皆が美味しいという物を美味しいと感じられないのは本当に残念なことだと思っているが、それでも私は蕎麦が美味しいという人に聞きたくなる。「ぶっちゃけ、本当に蕎麦って美味しいと思って食べてます?」と。さすがにそんな質問は失礼すぎてしたことはない。だが、あんまりみんなが「ここの蕎麦は美味しい」「このへんで一番美味しい店」と口々に言うのを聞くと、なんとなく口裏をあわせて笑顔でいても、内心は疎外感でいっぱいになる。天ぷらの揚がり具合を絶賛するのが関の山だ。実際、天ぷらはカラッと揚がって、家ではどうしてもできない匠の技だからね。
でも心の中でひそかに抱く疎外感は、そのうち腹まで立ってきて、意地の悪い思いまで頭をよぎる。

「みんな『裸の王様』なんじゃないの?本当は美味しさなんてわからないのに、そば通だと言ってる人の食べ方を真似して、自分もそば通のフリして美味しいって言ってるだけなんじゃないの?」

はぁ・・・。悲しいかな、こんなにも私にはその「蕎麦の美味しさ」とやらがわからないのだ。ここまできたら諦めたほうがいい。

しかし、年越し蕎麦は食べる。美味しくは思えないが日本の伝統行事だから食べる。江戸時代にはもう年越しそばがあったというのだから、ここは食べなくてはね。
夫の実家は、紅白が終わる頃に冷たいざるそばを食べる。結婚して最初の大みそかに食べたのだが、私の実家は温かい汁蕎麦だったので、家が違うと随分違うものだと思ったことを覚えている。
我が家は、台所を預かる私が西だから、というのではなく、冬はやはり寒いので温かい天ぷら蕎麦をつくって夕飯に食べる。たぶん関西風のだしだろう。いりこだしをふんだんに使い、しょうゆと少しみりんを加えてつゆをつくる。蕎麦だから醤油の味を効かせたつゆにはしているが、それでも蕎麦屋で食べる汁蕎麦より色は薄い。にしんそばはニシンが甘辛いので汁の味を少し加減できるが、天ぷら蕎麦なんだから濃い目に濃い目にと思って作るのだが、どうしてもお店のように濃くはなりきれない。そばつゆをつくるのは私には本当に大変なのだ。そしてやっとできたあつあつのつゆとアルデンテの蕎麦を黒い丼に入れ、天ぷらやホウレン草のお浸しや薬味をのせて、その年最後の「提出」となる。
一年に一回の提出なのでまあいい。しかし、年の締めくくりに食べるものだから、一回とはいっても気が重い。今年からは外へ食べに行かせてもらえないだろうか・・・。

夏になったら、ぶっかけうどんが食べたい。ゆでて氷水にさらしてキュッとしめたうどんに、すだちとだし醤油をかけてネギをパラパラっとかけて・・・。クーッ!!最高だよ!!

よし、決めた。今年はうどんを打とう!
でも蕎麦は一生打たない。蕎麦打ちが難しいことは体験済みだ。夫にはそれを言い訳にしよう・・・。

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