防水エアーランタン 非常時の灯り

熊本・大分を震源とする今回の大地震は、当初の予想をはるかに超えて長期化している。本震と言ってもおかしくない震度4以上の地震が「余震」として今も頻繁に続いている。これで余震だというなら、いったいどのくらい大きな揺れを本震と言うのかと思う。現地の方たちは「余震」と言われる度に「それなら次の本震はいつ来るのか、どのくらいの規模なんだろうか、もう本震は去ったのだろうか」と想像もつかない恐ろしさに不安な日々を過ごされているかもしれない。

今回の地震を見て、直下型地震の破壊力は、規模を数値化して頭で理解する「地震」というものの範疇を超えているように感じる。つい数日前まで、春が来て桜が咲いて菜の花が咲いて・・・と美しい自然をみんなで愛でていたことを思うと、この地球の激しい変わりようは恐ろしい以外に言葉はない。地震が起きていない平和な時は、地球は止まっていて、太陽がまわって動いている・・・と目で見える景色から錯覚し、安心しているような所が私には心のどこかにあった。しかし、今回の直下型地震で見せた地球の顔は、やはり「動くもの」の顔である。地球は生きている、46億年前に誕生してから今も進化し続けている、その巨大な怪物の上に私たちは立っている、そういう本来の地球を私に思い出させた。
かろうじて倒れずに済んだ家を再建しようと片付けに入るも、すぐまた揺れる。倒れなかった我が家が今度の揺れではもたなかった・・・という人の表情を見ると、人間の力が及ばない大きなものを相手にしている苦痛が伝わる。額に汗して建てた、かけがえのない我が家だろう。家族の成長を見続けてきた家、家族の思い出がそこかしこに詰まった家のはずだ。それほどの地震を経験したことが無くても、家が破壊されるやるせなさは、実際に被害に遭われた人からすれば1/1000、1/10000かもしれないが想像することはできる。それまで気丈にふるまってきた人も、気力なんてなくなるだろう。振り絞る力のもとは家族であり、家なのだから。

電気は一部の地域を除いて熊本市内はほぼ復旧したというが、明かりの途絶えた夜はどれほど怖かっただろう。東日本大震災の時、東京の我が家はマンションのエレベーターは止まったものの室内は停電を免れ、水もガスも無事だった。しかし、駅構内や街中などの明かりは最小限に絞られ、我が家も数時間の計画停電になったが、たったそれだけでも不安な夜だった。人が多い東京でもそうだったのだ。

その不安な夜の経験から、私は東日本大震災後に灯りとなるものをいろいろ買い集めた。ラジオも、大音量の警報音が鳴る大きな懐中電灯も阪神淡路大震災の後に購入したが、東日本大震災の時に久しぶりに出してみると、電池を入れるところが真っ赤に錆びてしまっていた。使えないほどではなかったが、すぐに全て新しいものに替えた。懐中電灯は大、中、小と買い揃え、中サイズはインターホンの隣に壁に穴を開けて備え付けた。灯りはろうそくなども買ったが、ソーラータイプのものを探した。太陽の光が当たるところに置いておけばソーラーパネルが充電してくれて電池がいらない、というのがやはり非常時の夜にはいい。

私が買ったうちのひとつで、とてもいいと思っているものはランドポート社の「エアーランタン」である。これを我が家は常に窓際に置いている。
水着などを入れる透明のプールバッグくらいの厚みの透明ビニールで出来ていて、上部にソーラーパネルがついており、その裏側には小さなLEDライトが10個、ぐるっとUFOみたいについている簡単なつくりのものだ。
普段使わないときは押しつぶしてたたんでおくことができ、使うときは、吸い口から浮き輪を膨らますように息を吹きこんで立体にして使う。8時間太陽の光で充電すると省エネモードで約6時間、普通の明かるさでは約12時間使用できるし、ビニールなのでとても軽量なのもいい。また持ち歩くのにも、どこかへひっかけておくのにも便利なハンドルがついているところも便利だ。防水ランタンなので、野外で使えるところも防災としていいし、もちろんキャンプにも向いている。
灯りの色は以前は2色あったような気がするが、私は文字がはっきり見えるクリアカラーを選んだ。点灯はオンとオフだけでなく省エネモード、普通の明かるさ、点滅の3種類の方法が可能だ。
LEDの白い灯りなので省エネモードでも非常に明るい。それに透明なボディなので全方向が明るくなるのもいいし、置くことができる。そこは懐中電灯には真似できない点だ。それに加え、これは息を吹き込んで立体にするので、空気を加減して形を自由に変えることができる。パンパンに膨らましてもいいし、私などはあえて80%くらいの空気量にしてビニールにゆとりを持たせている。ゆとりがあると、LEDの明かりはビニールの中で屈折し、ちょっとした凸凹が上下斜めに光を分散させて、キラキラとさらに明るく照らすようにみえるのだ。

私はこれを常にやや膨らました状態で窓辺に置いている。ビニール傘を閉じた状態で長く置いておくと開きにくくなるように、これもそうなってしまったら困ると思ってのことだ。窓辺は夏場の直射日光は当たらないが、冬は直射日光も当たるのでビニールの劣化が気になるが、我が家はかれこれ3年ほど同じ場所に置いているが、今のところ全く劣化しておらず綺麗なままだ。常に充電しているのでLEDの充電残量は減っているだろうが、今も煌々とした灯りがいつでもつくので、もしこれから何か非常時の灯りを探そうという人には、こんなタイプの灯りもいいかもよ、とお伝えしたい。

先日、国会中継の衆院質疑を見ていたら、民進党のある議員が気象庁長官に「いつ、どのへんで、どのくらいの規模の地震が起こるのか、地震のプロなんだからある程度はっきり答えてくださいよ」と詰め寄っていた。もし言えば混乱にもなるだろうし、言っても起こらなかったら騒動の責任を追及されることだから、答えるは難しい質問だろう。しかし、それより、いくら気象庁でも地震の起こる場所や規模を予知することは難しい話のはずだ。結局、気象庁長官は「日本はいつ、どこでおこってもおかしくないという危機意識を持って過ごしていただくことが最善と考えます」というような答えしか最後まで出せなかった。残念だけど、今の限界なのかもしれない。

直下型地震は余震のP波、本震のS波がほぼ同時にやってくるので緊急地震速報も間に合わないという。
いつ、どこにいても大地震はおこりうるという意識は忘れてはいけないと、錆びた懐中電灯を見て東日本大震災の時に思ったはずのに、私はまた忘れかけていた気がする。
神経質になりすぎない程度に、でもしっかりとその時のために準備だけはしておこうと、今日もまた心をあらたにしている。
一日も早く地震が落ち着いてくることを祈っている。

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